Column コラム

カマラ・デ・ロボスのバーにて

2019.4.5

ポンシャはマデイラ島のカクテルで、カイピリーニャの原型といわれており、ラムと柑橘類を使ったカクテルです。
以前、チャーチルも愛した美しい入り江の風景の漁村、カマラ・デ・ロボスという場所が発祥の、「フィッシャーマンズ ポンシャ」を飲んでとても美味しかったので、またあのバーに行きたいと思い、ツアーの皆さんと一緒にタクシーを拾いました。
タクシーの運転手に行き先を告げ「ポンシャを飲みに行く」というと「ポンシャね。いいね。じゃ『ニキータ』って知ってる?」と聞かれました。ニキータ…昔、映画であったよな、と思いながら「それはなに?」と聞くと、それもマデイラのカクテルだそう。
「ニキータ、絶対飲んでみて。美味しいから。」
「どんな味なの?」
「白ワインと、ビールと、バニラアイスが入ってて、これがまた絶妙な味なんだよ」
・・・全然美味しそうに聞こえない。
聞き間違えたんじゃないだろうか。
この私の戸惑いに反して、同行してくれたツアーのお客さんは興味津々でした。
運転手が「ほら、あの角の店だよ」と丁寧にお店の近くまで乗せていってくれたので、前回とは違うそのオススメのお店に入りました。

入ってみるとコワモテの店主と店一杯のクリスチアーノ・ロナウドグッズとバーベイトのボトル。「ポンシャとニキータを飲みたいんですけど」と恐る恐るオーダーすると、おじさんは「グッドチョイス」といってカウンターに入りました。
先にポンシャを作ります。まずはジャーに、砂糖、レモンの皮をいれて木の棒(ポンシャ棒)でつぶします。糖蜜を加え、さらに両手で棒をはさんでこするようによく混ぜます。ホワイトラムとオレンジジュースを加えて出来上がりです。
ポンシャは各お店のレシピがあり、パッションフルーツやオレンジで作ったり、アブサンで割ったりするものもあります。
次に、例のニキータ。ジャーにバニラアイスを入れ、白ワインを足し、タップから生ビールを加え、ミキサーで混ぜます。バニラシェイクのような見た目のニキータが出てきました。
どんな味なんだろう…とこわごわ一口飲んでみると…「お…美味しい!」見た目に反してビールが甘さを抑えるのか?、べたべたな甘さではなく意外な美味しさでした。

「バーベイトのボトルが多いですね。私は日本でバーベイトを輸入しているんですよ」
というと、とても嬉しそうに「そうか!バーベイトはNo1だ!うちは、マデイラ島イチ、バーベイトを売っている店だ。リカルドも良く知ってるぞ。(実際知っていました)」
気を良くしたおじさんは「パッションフルーツとバナナ。どっちもマデイラ島の特産なんだ。この糖蜜をバナナにかけるとうまいぞ」とサービス。
「俺はロナウドのお母さんと親しいんだ。こないだファミリーシートに招待されてサッカーの試合を観戦したんだ。すごいだろ?」とその時の動画を携帯から見せてくれた「これね、これがお母さん。ほら、ユニフォームにもサインしてもらったんだ、で、これが…」と熱くクリスチアーノ・ロナウドについて語り始め私たちにカラーコピーのサインまでくれました。
おじさんがクールダウンしてきた頃を見計らい、お会計をお願いすると「要らない、要らない!君たちは友達だ。このポンシャとニキータは俺のおごりだ」とお金を受け取ってくれません。
私たちは素直に厚意に甘え、御礼を言いました。
マデイラ島の人たちは、人懐っこく、サービス精神が旺盛だな、と改めて感じた日でした。